Research Projects

研究内容

人類の文明は、常に新しい材料機能の発見とともに発展してきました。今や、高強度・高じん性の金属や高硬度のセラミックス、モーターのような電気機械的な仕事ができる圧電体から磁石に至るまで、驚くほど多種多様な機能を有する材料で溢れており、我々の生活を支える機械構造物や工業製品はいずれも性質の大きく異なる材料同士を組み合わせて用いることでその機能を引き出しています。ところが、我々がこれまでに発見し利用しているものは、物質が持ち得る機能のほんのわずか一部に過ぎません。物質には、人類がいまだ知らない無限の可能性が秘められています。

当研究室では、材料の「力学的な強さ」の根源とその法則性をミクロな観点から解明するとともに、原子や電子といった究極的ミクロ構造を意図的に制御・設計することで、これまでの常識を覆すような革新的な強度特性を材料に付与する研究を行っています。例えば、これまでに、理想強度(=材料が持ち得る理論的な最高強度)を超える強度特性を発現させることや、材料ごとに決まった「定数」であるはずの弾性定数を連続的に制御し所望の値に設計できる技術などを開発しています。また、複合物理的観点(マルチフィジックス)から、電気的・磁気的性質などの電子物性が機械的変形とリンクすることを見出し、物質に隠された未知の潜在的機能を力学的創発によって意図的に引き出すことで、次世代技術を支える革新的構造・機能材料を創出・設計する研究を行っています。さらに、材料力学・物質科学に関する先端理論と数値解析方法の開発・高度化により、我が国の「ものづくり」を支える技術開発も行っています。

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破壊と強度の物理学
破壊を理解し、壊れない材料へ
モノが壊れる根源的な仕組みを理解し、壊れない材料を創るための研究を行っています。光や電子環境を制御することで、ガラスのように脆く壊れやすい物質を、粘り強く変形する金属のように創り変えられることが分かってきました。
ナノ材料の電気-磁気-機械物性
「一億分の1」の量子機械の創製
ナノ・原子スケール材料には、特異な磁性・強誘電性が現れ、機械・電気・磁気エネルギーを相互に変換できるマルチフェロイック機能が発現します。これを解き明かし、「一億分の1」の極小世界でも作動する機械「ナノ・量子機械」の創出を目指します。
先端量子物質の科学
次世代デバイスを拓く新奇機能
「21世紀は量子の時代」と言われるように、量子コンピューターなど量子技術を応用したデバイスがどんどん発明されています。このようなパラダイムシフトを起こす未来の革新的デバイスを開拓する先端量子物質機能の研究を行っています。
ひずみエンジニアリング
物質の潜在機能を引き出す「ひずみ」
火事場の馬鹿力のように、人間大きなストレスがかかると大きな力を発揮します。物質も同様に応力(ストレス)がかかると潜在的な機能を発現することが分かってきました。負荷による変形(ひずみ)を利用して新しい物質機能の創発に挑戦しています。
理論解析技術の開発
物質世界を紐解く理論計算/データ科学融合
物理法則を解き、現実世界を計算機内でシミュレートすることで、実験では見えない/分からない現象を解き明かすことができます。最先端の固体物理理論や独自の材料解析ソフトウェア開発に加え、機械学習などデータ科学との融合も行っています。
研究設備環境
当研究室では、大型の科学技術用並列計算サーバー(Intel Xeon Processor, 3,000 Cores, 100 Nodes, InfiniBand interconnection)やワークステーション多数を専属所有しています。加えて、原子間力顕微鏡など微小な形状・物性測定装置も所有しています。