破壊と強度の物理学

破壊を理解し、壊れない材料へ

モノが壊れる根源的な仕組みを理解し、壊れない材料を創るための研究を行っています。光や電子環境を制御することで、ガラスのように脆く壊れやすい物質を、粘り強く変形する金属のように創り変えられることが分かってきました。



夢の「壊れない材料」を創る科学

-理論強度を超える挑戦-


もしも壊れない強い材料が実現できたら、どんな世界になるでしょうか?
いまの機械や構造物などの設計は全て「現在の人類が扱い得る材料の強さ」に基づいて行われています。 壊れない材料が実現できれば、全ての「ものづくり」にイノベーションが起こります。

最近では、光や電子線をあてることで ガラスのように脆い物質が、まるで金属のように粘り強く変形する性質を獲得するなど、壊れない物質に創り変わる不思議な現象が発見され始めています。 当研究室では、こうした物質の構造的・力学的な強さを根源から解明するとともに、光や電子線によって変化する原子・電子構造といった物質の究極的構成要素を制御・設計することで、 強度限界と思われた理論強度をさらに超えた革新的高強度機能を自在に付与する研究を行っています。

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関連論文



小さな世界の破壊のルール

-究極の破壊の法則をめざして-


スマートフォンやタブレット端末などの電子デバイスはもちろんこと、パワーデバイスやセンサー機器、生体適合精密機器に至るまで、 ナノメートル寸法の超微小な材料が使われており、今やナノ材料は社会基盤を支える基幹となっています。 一方、近年では、こうしたナノ材料が、我々の良く知るマクロな材料とは全く異なる力学的性質を示すことが明らかになりつつあり、その解明が急務となっています。

当研究室では、ナノメートル寸法の微小材料を対象として、その強度特性や破壊機構を明らかにする研究を行っています。 私たちはこれまでに、ナノ材料では従来のマクロな材料における破壊の考え方が破綻し得ることを明らかにしました。 さらに、微小な世界でも成立する新しい破壊基準を発見し、これによって破壊の一般的な法則を解き明かす研究へと展開しています。

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関連論文

  • Takahiro Shimada, Kenji Ouchi, Yuu Chihara, Takayuki Kitamura
    Breakdown of continuum fracture mechanics at the nanoscale
    Scientific Reports, 5, 8596 (2015)

  • Takashi Sumigawa, Takahiro Shimada, Shuhei Tanaka, Hiroaki Unno, Naoki Ozaki, Shinsaku Ashida, Takayuki Kitamura
    Griffith criterion for nanoscale stress singularity in brittle silicon
    ACS Nano, 11, 6271 (2017)

  • Takahiro Shimada, Kai Huang, Le Van Lich, Naoki Ozaki, Bongyun Jang, Takayuki Kitamura
    Beyond conventional nonlinear fracture mechanics in graphene nanoribbons
    Nanoscale, 12, 18363 (2020)

  • Takashi Sumigawa, Takahiro Shimada, Kai Huang, Yuki Mizuno, Yohei Hagiwara, Naoki Ozaki, Takayuki Kitamura
    Ultrasmall-scale brittle fracture initiated from a dislocation in SrTiO3
    Nano Letters, 22, 2077 (2022)



物質世界の「崩壊」を記述する固有値

-材料のヘルス・モニタリング-


物体に外力を負荷すると変形し、やがて構造を維持することができずに破壊に至ります。 機械構造物や電子機器を設計し安全に運用するためには、「材料がいま、どのくらい危ない状態か?」を示す指標が不可欠です。

当研究室では、材料の安定・不安定を判別する理論を提案し、任意の物質系が任意の外場に対して「いつ」「どのように」不安定となり得るかを表す基準(不安定性クライテリオン)を開発しました。 これによって、破壊など材料が力学的に不安定となる状態を予測することができるようになりました。 また、この理論を応用することで、材料の電気的・磁気的性質が失われる機能不安定現象についても予測できることが分かりました。

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関連論文


材料物性学研究室
材料物性学研究室
京都大学 大学院工学研究科 機械理工学専攻